読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

はじめての海外文学

頭がふっとぶほどおもしろい海外文学のお話や、イベント、本屋さんのお話など本にまつわることを中心に書いていきます

第1回日本翻訳大賞受賞『カステラ』

f:id:onakaitaichan:20150502151720j:plain
 
日本翻訳大賞なるものが、今年から始まりました。
翻訳家の西崎憲さんを中心に、クラウドファンディング(ってやつ??)で資金を集め、先日喜ばしいことに無事第一回受賞作が発表されました。
 
栄えある第一回受賞作はなんと2作品。
 
『カステラ』パク・ミンギュ クレイン

パク・ミンギュ『カステラ』 | 図書出版 クレイン

エウロペアナ:二十世紀史概説』パトリク・オウジェドニーク 白水社

白水社 : 書籍詳細|エウロペアナ 二〇世紀史概説[エクス・リブリス]

 
そして、読者賞に
 
おめでとうございます。
大賞作品2作品が、韓国とチェコのものという、日本ではまだまだあまり知られていない翻訳物だったことも、大きな意味があるのではと思います。
 
でも、そもそも日本翻訳大賞ってどういう賞なのでしょう。
いい翻訳に送られる賞?
わたしたち一般人からすると、なんだかちょっと難しそう・・・。いったいどういう基準で良い翻訳というものを選んでいるのかとても気になります。
そこでわたし、中間報告会に行ってきました。
直接お話を聞けば、きっともっと具体的にこの賞のことがわかるのではないかと考えたからです。
 
行ってみて、面白かったー!!
まずびっくりしたのは、西崎憲さん、柴田元幸さん、岸本佐知子さん、金原瑞人さん、松永美穂さんというそうそうたる審査員のメンバーのみなさんも、基準をかなり迷われていたということ。何がいい翻訳なのか、翻訳はいいけれど小説としてダメな物はいかがか、原作に忠実にしたものが良いのか、ムードを守ったものが良いのか、、、、みなさんすごく迷われて簡単には答えが出ていなかった。おそらく小説としておもしろいものであることは基本。その上で翻訳はどうなのかというところになっていたようでしたが。
これはなかなかに難しい審査だったのではないでしょうか。元の言語が違えばその基準もさまざまになってくるだろうと思いますし、すべての言語をもちろん熟知しているわけではないので、みなさん苦労されたようです。
でも、最終的にはやはり ”読んでおもしろかったもの” ここが一番重要だったのではないかと、お話を伺って思いました。
ということは、これはきっとわたしたち一般人にも通づる感覚でしょう!日本翻訳大賞、それは昨年一年間でもっともおもしろかった翻訳小説に送る賞!ということでよいのではないでしょうか。(いいですよね??ね?、、、)
 
前置きが長くなってしまいましたが、やはりこれは読んでみないことには!!おもしろいと言われれば読むべきでしょう!しかも日本を代表する5人の翻訳家の太鼓判が押されているのです。読まないという選択肢はございません。
と思いましたので、さっそく『カステラ』から読みはじめました。
 
わたし実は韓国文学初挑戦です。ドキドキ。
 
読んでみて、まずすごく読みやすい!
いやでも、文章は読みやすいけれど、中身は簡単にするりと飲み込めるわけではなく、これがなかなか一筋縄ではいかないくせもの。
この独特の感性は、中毒者がわらわら出るのではないかなぁ。
村上春樹風と評されているようで、たしかにうなずける部分はあるけど、春樹のあの一種のダンディズムのようなものはまったくなくて、もっとドライ。非常に今っぽい感じを受けました。これ20代の若者はすごくよくわかったりしてしまうんではないだろうか。わたしは残念ながらもう若くはなく、なんとなくわかるような・・・わからないような・・・わかるような・・・やっぱりわからない!という感覚で、くやしいわ。
 
だって、まさかのとつぜんハルク・ホーガンヘッドロックをかまされて、希薄な空気の中、ハルク・ホーガン上腕二頭筋と胸部の間に宇宙を感じているんですよ。”そして宇宙の脇の下がこんなに臭いとは。”のひとこと。(「ヘッドロック」より)
 
それに、上司がとあるゲームにはまり、その後なぜかタヌキになってしまう物語。いや、なんでって言われてもなっちゃうのだからしかたない。”いいかい、世の中っていうのはね、あんたが思ってるのとは似ても似つかない場所なんだぜ” ということになるみたい。(「ありがとう、さすがタヌキだね」より)
 
という本当に独特のユーモアと啓発にあふれていて、飽きません。
 
わたしが好きだったのは「そうですか?キリンです」と「朝の門」。
両者はまったく違うタイプの話だったけれど、どちらもある種の哀しみがあふれていて、なぜだかせつなくなりました。
 
韓国の若手作家さん、非常に勢いがあるのではと思います。
日本ではあまり見ることがないように感じますが、実はこちらのクレインhttp://www.cranebook.net/さんをはじめ、QUONhttp://www.cuon.jp/products/detail.php?product_id=43さんなど韓国文学専門の出版社も存在しており、定期的に新刊がでております。そして『カステラ』パク・ミンギュさんの新作『亡き王女のためのパヴァーヌ』もQUONさんより発売されました!
これを機に注目度がぐんとあがることを願っていますよ!!