はじめての海外文学

頭がふっとぶほどおもしろい海外文学のお話や、イベント、本屋さんのお話など本にまつわることを中心に書いていきます

『流』東山彰良

5月に入って、一日中家にいる日が増えた。

だから、この機会に奥行きがあって使いづらかったうちの本棚を改造しようと、木材とネジなどを買ってきて、奥にもう一つ棚をつけてやろうなどと画策し、奮闘してみたり(ちなみに泣けるエピソードがいろいろあってまだできていない。)気ままにそうじをしてみたり、散歩したり、もちろん本を読んだりしていたら、あっという間にもう月の後半になっていた!!

衝撃的。。

 

そして、一足先に読ませていただき、発売を楽しみに待っていた本がなんと!

すでに出ていた!!

 

仕事をやめたら、なんだかもう思考がぼんやりになってきているような、、、。

気づけば音速のようにあっという間に時間がすぎているというこのじったい。。なんということでしょう!人生は短いなぁ〜。やりたいことをやってきたような気がしているこの35年間。でも気づけば時代や人に流されて、、、流されまいと必至で立ち向かっているような気がしていても、そんなの自分の自己満足にすぎず、結局は大きな流れに飲み込まれて人生最後の時間をむかえるような、そんな気がする今日このごろ。

 

生きるっていうことは、それだけでたいそうなことだ。

流れに逆らって歩くのも、身をまかせてしまうのも、どちらも決して楽じゃない。

結局無視できないのは、自分の血の流れだけだったりする。

 

それでも、生きたい。

その気持ちだけが尊いのかもしれない。

 

そんな気持ちを沸き起こしてくれた小説が、5月12日に講談社より発売になっていた

『流』(東山彰良)|講談社BOOK倶楽部

このミス大賞作家 東山彰良の新刊です。

 

数年前に『ジョニー・ザ・ラビット』といううさぎが主人公のハードボイルド小説という完全に頭おかしい小説を読んだときから、気になる存在だったのでした。

その後『ラブコメの法則』を読み、この人は!!来るかもしれない、、、、と個人的に思いました。そして今回の新刊。完全に頭ひとつふたつ突き抜けた感じ。

初めて知ったのだけど、著者は台湾生まれなのだそうで、幼少期の体験やリアルな台湾の様子が本当に生々しく描かれておりました。

わたしは台湾には行ったことがないけれど、こんな人たち本当にいそうだし、出てくる食べ物も魅力的だし、町並みの様子はもちろん、歴史、中国との関係までもがっつりとまではいかないけれど、しっかりでてくる。

でも、そのうえでまるでエンタメ映画を見ているようなのだ。

台湾の三池崇史的な、、、。深作欣二ではない、もしかしたら北野武、、、、でもやっぱり三池崇史かなぁ。。このB級感は。

 

B級にはB級だからこその、切なさがある。

後には引き返せない絶体絶命感、どうしようもないプライド、一族の血と涙。

そういうのを必至で守ることが、何よりも大切に思えているというこの瞬間は、人生の中でもとんでもなく濃い時間だったりするんじゃないかなぁ。あと、はかない恋も。

そういうものがぎゅうっと濃縮されてつまったような、壮大な物語だった。

 

今年はわたし、全然日本の小説読んでないけど、これは本当に年間ベストに入ってくるんじゃないかという1冊でした。ぜひ!