はじめての海外文学

頭がふっとぶほどおもしろい海外文学のお話や、イベント、本屋さんのお話など本にまつわることを中心に書いていきます

『はじめての海外文学』読んでみた

えー、みなさま

明けましておめでとうございます。

 

遅いわっっていうつっこみあまんじてお受けいたしますごめんなさい。

まだまだ月一更新がせいいっぱいのブログですが、今年もどうぞゆるりとよろしくお願いいたします。

 

さて、年もあけてなんとなく一段落なのかなと思っていた『はじめての海外文学フェアvol.2』ですが、なんのなんの開催店舗もちゃくちゃくと増えてるし、2回目のイベントも決まったそうで、まだまだこれからと言ってもいいくらいのロングランフェアとなってきました。

イベント、超面白そうなんですよ。

詳細はこちらから!

real.tsite.jp

 

時間がちょっと夜なので、残念ながら子どもがまだちびのわたしは見に行けず……。

お時間ある方、お近くの方、ぜひぜひわたしの分まで堪能してきてくださーい。

 

で、今日はさっそくこのフェアのリストから、わたしが読んだ本の感想をこちらにまとめておきたいと思います。

実はまだ買って読めてない本もあるんですが、とりあえず読んだ本やすでに読んでいた本のぶんだけ書いておこうかなと。

ひとつ言えるのはどれも本当に面白かったということ。

もちろんわたしの好みで好き嫌いのかたよりはありますが……いや、でも嫌いっていうのはなかったな今のところ。

 

あ、そうそう、ちょっとその前にぜひこちらを読んでほしい。

この間青山で行われた『はじめての海外文学スペシャル』というイベントの詳細レポなのですが、すごく丁寧にまとめられていてこれを読むだけで本当にどの本も読みたくなっちゃいます。

素晴らしいレポートなのでぜひ。

(ちょっと動画は冒頭からわたしとむすめの大騒ぎで申し訳ないのですが……)

www.alc.co.jp

 

そして今回のフェアのリストですが、主催者のでんすけのかいぬしさんが作っているフリーペーパーにゃわら版(こちらも毎月素晴らしい出来!どうしたらこのクオリティを毎月たもてるのか……と見るたび思っちゃう)のホームページより見ることができますので、どんな本が入っているのかしら……という方はこちらから。

www.st-paulsplaza.com

 

f:id:onakaitaichan:20170125144137j:image

 

さて今現在、フェアの中からわたしが読んだものが、こちらの9冊プラス今貸し出し中で(妹め……)手元にない1冊で10冊になりました。

 

けっこうあるので手短に書いていきたいと思います。

なお、いつもつけていた★は今回はみんな5つですはい。なんといってもビギナー向けに選ばれた本たちですから……。

 

まずはこちらから

『屋根裏の仏さま』ジュリー・オオツカ/岩本正恵、小竹由美子訳

この本、わたしはきっとこのフェアがなければ読んでいなかったと思うのですが、出会えて本当によかったと思えた一冊です。

百年前、「写真花嫁」として夢や希望と同時に抱えきれないほどの不安も胸にアメリカに渡ったたくさんの日本の女たちの声を、 ”わたしたち” という人称で記した物語。決してただまとめたわけではなく、無数のそれぞれの声をそのまま記録したという不思議な文体の作品でした。

フィクションといえどもそれは限りなく真実で、ひとつひとつはまったく別の意味を持っているんだけど、それが折り重なってひとつの大きなうねりを伴った物語になっていくというすさまじいもの。

常に一切の情感的なものは排除して淡々と綴られていくけれど、戦争がおこり一人また一人と収容所行きになっていく事実は動かない。それゆえどうして連れて行かれるのかわからないまま人知れず消えていく人たちが、確かにそこに生きていたんだということが実感として迫ってきます。

この文体だからこそ、胸に来る鬼気迫るものがありました。

すごかった。文句なしに素晴らしい作品でした。

 

『歩道橋の魔術師』呉明益/天野健太郎訳

これはね、わたしずーっと推してる本ですからもう間違いないです。前回の日本翻訳大賞にも推薦したくらい。個人的にも大好きなんです。

そうそう、このブログにも感想書いていました。

onaka.hateblo.jp

今読み返しても、ここに書いたのがわたしの感想のすべてなので、これはこっちを読んでもらうことにしよう。うん。けしててぬきじゃないよ。。星もすでに5つだった!

 

お次は『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ/田口俊樹訳

これも書店員時代からずっと推してる作品。

もう大好き!

戦争ものって重くて苦手……という方。いやちょっと待って、ぜひともこれを一回読んでほしい。

ここで描かれている世界は確かに壮絶です。毎日が生きるか死ぬかの世界。生き延びたのはちょっとした運の差。そんな厳しい世界で主人公たちがくり広げるはてしなく出ないうんこの会話。

ん?

うんこ?

とちょっぴり興味をひかれちゃった方はぜひぜひ手にとってみてください。

まぁもちろんそれだけの話ではないけど、でもそのうんこが出ないということがどういうことなのか、もう本書を読めば最初からわかるのですが、それがわかったときわたしたちは本当の戦争の恐ろしさにうち震えるのです。そして同時に物語の面白さにのめりこんでいるはず。今だからこそ若い世代にも読んでほしい1冊。

 

さて次もこのフェアがなければ出会っていなかった1冊

『海に住む少女』シュペルヴィエル/永田千奈訳

フランスの宮沢賢治と言われているそうで、たしかにどこか不思議な現実と異世界のはざまのような空間を漂っている、童話のような雰囲気をもったお話は通じる部分があるのかも。でもわたしはなんとなく倉橋由美子を思い出しましたよ。ああいうグロさはないけれど、どこか不穏な空気が流れていて全編的に賢治の持つ暗さとは別の種類のどろりとした暗さのある短篇集でした。非常に好きです個人的に。

なんか読み終えてしばらくたってまた、ああちょこっと読みたい……と思う、なんというかくせになるタイプの本でした。

 

こちらはうちの本棚にしっかりささっていたけれど、内容をすっかり忘れていたので今回のフェアを機に再読した1冊。

『幽霊たち』ポール・オースター/柴田元幸訳

おお、こんな話だっけか!

ページをめくるたびに、うんうんたしかに読んだことある、、、けど先は思い出せないという自分の頭の悪さを再認識した本。

わたしは実はオースターの良さがよくわからない人間であるのですが、前回読んだときよりは内容を理解したように思います(たぶん!)。

ブラウンとブルーというまた暗号みたいな名前の登場人物たちがくり広げる、監視したりされたりの攻防戦は(実際はすわってじっとしているだけですが)ほとんど自己との葛藤。特に変わったことは何も起こらないけれど人の心の闇を見ているようでぞくぞくしました。ラストがいまだにどう解釈すべきか悩んでしまうけど、こんな薄い短篇のような小説のなかで、どんどん心の中にもぐりこんでいくような感覚を覚えるのはおそろしい。

 

次はこちら

『ティファニーで朝食を』カポーティ/村上春樹訳

こちらはこのフェアが始まる直前に偶然読んでいた1冊。

オードリー・ヘプバーンの映画は誰もが知っているし、原作も非常に有名ですが、改めて読んでみてカポーティの文章のスタイリッシュさに年がいもなく乙女のようにポーっとなってしまいました。かっこいい。小説を読んでこんなふうに心がときめいたのは久しぶりかも。また主人公ホリー・ゴライトリーはヘプバーンとは少し印象が違っていたのですが、そのちょっと下卑たところがまたかっこよく、いっぺんでとりこになってしまいました。映画もまた見直したいなぁ。好きな映画の原作を読んでみるっていうのも、はじめての海外文学の選び方として大いにありじゃないかなぁと思います。

 

『紙の動物園』ケン・リュウ/古沢嘉通訳

こちらもですね、なんとこのブログで感想を書いておりました。本屋大賞翻訳部門の第2位だったんですね。

onaka.hateblo.jp

 

ということで次、

『幸福はどこにある』フランソワ・ルロール/高橋啓訳

こちらは一風変わった本でして、なんと九州限定販売というかなりレアな本です。関東では(というか九州以外では)書店に並んでいるところは残念ながら見られませんし、天下のアマゾンでも買えません。そう言われるとますますほしくなっちゃうんですよね〜。

どうやって手に入れたかといいますと、わたしは九州の取り扱い書店さんからお取り寄せいたしました。方法とできる店舗は上のリンクの伽鹿舎さんのホームページよりご覧いただけます。よろしければぜひ。

この本、まず装丁がすごく綺麗。こだわって作られている本だということがよくわかります。それだけでも本好きにはたまらないですね。

内容は、タイトルの通り幸福とは何かを精神科医ヘクトールが、自分に課題を課しながら考えていくという話で少々自己啓発的な小説でした。読みやすさに関しては群を抜いていましたので、読書自体が苦手な方や、テーマに興味がある方にはとても向いているんじゃないかなぁと思います。

 

そして最後

『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ/若島正訳

こちらはわたしはだいぶ前に読んだもので、本当は何か書くにはもう一度読み直さないといけないのですが、残念ながらちょっとその時間がとれないので、さらりとふれる程度にしておきます。

ちょっと背伸び篇に選ばれている一冊なので、はじめての1冊にはもしかしたら向かないかもしれません。でももし谷崎潤一郎とかお好きでしたら挑戦してみてもいいかもしれません。あと変態好きでしたらぜひ。

と言いつつも変態性は谷崎よりもずっと薄いように感じました。中年男の少女への純愛?が行き過ぎた結果というべきか、いやそれも変態か……。

やっぱりこの本のことまだまだ正しく理解できていない気がするので、またいつか再読したい。理解していないなりにちらりとのぞく奥の深さは十分感じていたので、今度はもう少し先まで進んでみたいと思います。その奥をのぞくのはこわいけど……。

 

さてさて駆足で紹介してきましたけど、これを書いている間にもう1冊読み終わりました。それはアゴタ・クリストフの『悪童日記』。こちらも久しぶりに再読したのですが、いやはや全然違う印象を受けました。そして続けて3部作も読み続けているのですが、こちらは全部読むと『悪童日記』がまったく別の話になることに気がつきました。

そんなびっくりの感想も、またいつかここに書けたらなと思います。

 

 

いやこれ全部読む人いるんだろうか……というくらいぐだぐだ書きつらねてしまいましたが、本人は非常に楽しかったです。

来月からはちょっと新刊や本屋大賞や日本翻訳大賞などを追っていきたいと思っております。気になる本いーっぱいあるんだよな、いつもだけど。

ていうか来月も更新できますように!それが一番心配だ。。